4月の自然観察日記(2003.4.30現在)

赤字は初めて見られた種)

【自然観察日記】
4月1日

  • 3月28日から31日まで学会で仙台に行っていました。その間、観察はお休みでした。山形県との県境にいくとまだ雪が一杯残っていて、その間を流れる沢の水が非常にきれいに見えました。石をめくってみるとヒラタカゲロウとマダラカゲロウの仲間の幼虫がへばりついていました。また、オナシカワゲラが飛んでいるのが見えました。雪の間からフキノトウが見られる姿には感激しました。同行した北海道出身のY氏はあまり感激しません。どうやらフキノトウに感激するのは南に住んでいる人間だけなのかもしれません。そういえば、北海道ではアキタブキのフキノトウが住宅地であちこちに生えているのに、誰も興味を示さなかったのを思い出しました。「内地」から来た私のような人間だけが感激していました。今度見たフキノトウもアキタブキかもしれません。北海道ではフキノトウと並んでツクシを食べる習慣がないのも不思議でした。札幌市内の団地で、あたり一面ツクシだらけだったのに。でも、この話はまた別の機会にします。

  • 4月3日
  • 4月になってからさすがに蛾の数は増えてきました。一日大体8-10種の割で見られます。トビケラの仲間も何種か見られ始めました。今頃はニンギョウトビケラが多く見られます。

  • 4月4日
  • 今年もマイコトラガが一頭見られました。地下駐車場の天井にとまっていたので、写真が小さくなってしまいました。

  • 4月9日
  • 桜爛漫の今日この頃、次々と春の常連の蛾が登場しました。ノヒラトビモンシャチホコとイボタガです。イボタガはまだ翅がやわらかそうな生まれたての個体でした。これが来ると春が来たことを実感します。

  • 4月11日
  • 大きなマダラガガンボがやたら天井にくっついています。(ミカドガガンボは覚え違いでした)

  • 4月13日
  • 奈良の高畑にある新薬師寺に行ってきました。お寺は桜が咲いてきれいな割りにすいていてのんびりすることができました。昆虫ではキチョウが多く見られたほか、モンシロチョウ、アゲハチョウ、キタテハ各一頭見られました。また、ビロードツリアブの連結が見られました。あんなふうに連結したまま飛び回るのですね。今日は暖かくてまるで初夏の陽気でした。

  • 4月14日
  • 仕事から帰って、今朝採ったトビケラの同定を行いました。保育社の図鑑と津田氏の論文を頼りに雄の交尾器と翅脈とからトウヨウカクツツトビケラであることが分かりました。

  • 4月17日
  • 7時から川西市中央公民館で開かれた「身近な自然とまちを考える会」に出ました。この会は川西市のメンバーが中心に猪名川の自然を調べながら町づくりの提言を行っていこうとする有志の会です。私は牛尾先生の勧めで昨年から入ることになりました。ほとんど出席しないくせに、会の方針に口をだしてしまい、とうとう「芋生川」の毎月の定点観測に参加する羽目になってしまいました。でも、最近ほとんど野外観察にいっていないことと、この川が私の通っているアスレチックジムのすぐそばなので、少しがんばってみようかと思うようになりました。シダ観察や、トビケラやカゲロウの成虫を集められたらよいかなと思っています。

  • 4月20日
  • 雨なのに蛾の多い朝でした。マンションで2種類もヒゲナガガを見ることができました。ヒゲナガガはもちろんひげの長い小さい蛾です。野外ではクロハネシロヒゲナガを良く見るのですが、長いひげを横に伸ばしてふわふわと飛ぶ姿はかわいらしい感じです。このイメージで壁にとまっているケブカヒゲナガに網を近づけ、手でそぉっと触ってみると、アッと驚くほどすばやく飛び立ってしまいました。(ホソオビヒゲナガではなくケブカヒゲナガでした)
  • 休みの日はトビケラ成虫の同定につぶしています。いままで、1種類と思っていたウルマーシマトビケラに実は何種類も混じっていることが交尾器の観察から分かりました。まだ、正確にはわかりませんが、セーリスシマトビケラ、ナカハラシマトビケラ、コガタシマトビケラ、エチゴシマトビケラと不明種が何種類かが混じっているようです。文献集めをしなくてはなりません。

  • 4月23日
  • アトジロキリガは地下駐車場の天井にとまっていたもの。鱗粉がとれてほとんど模様が分からなかったのですが、かすかに前翅の特徴的な模様が見えていました。初めての観察です。 後で同定し直したら、クロスジキリガでした。残念!

  • 4月26日
  • 午前中外出するとき、エレベータホールのガラス窓をふとみると、体長4mmほどの小さいカメムシがついていました。急いで家に引き返してカメラと入れ物をもってきました。外出後、カメムシ図鑑で調べてみるとコブヒゲカスミカメでした。カスミカメムシの仲間は採ったことがなかったので、少し感激。小さいけれど実体顕微鏡でみると結構きれいです。午後、廊下を歩いていると、再び小さいカメムシが走っていくのが見え、またまた、入れ物をとりに家に戻りました。今度はどうやらコブヒゲカスミカメ♀のようです。初めてのカメムシが♂♀揃って見られるなんて、今日は一体どうしたのでしょう。
  • 夜11時ごろに「身近な自然とまちを考える会」から今年の予定表がFAXされてきました。毎月の「芋生川」定点観測が入ったので、今年も忙しくなりそうです。
  • とうとう早春の常連さんのエゾヨツメとオオシモフリスズメにお目にかかることができませんでした。大変残念な気がします。キリガの仲間もアカバキリガのように数の多いキリガが見られないなど、少し変な年です。桜も咲くのが遅かったし。

  • 4月27日
  • 連休というので、奈良の東大寺に行ってみました。人出は奈良にしては混んでいたものの、全体としてはすいていて、のんびりと過ごすことができました。もう東大寺へは何回も行っているのですが、意外に大仏殿には行っていないので、今日は大仏殿に行くことにしました。大きな大仏の前面の両側にハスを飾った巨大な花瓶が有るのですが、そこにやはり巨大なチョウが飾りとして合計4頭ついていました。しかし、なぜか脚が8本、口は象の鼻のようになっています。脚が8本なのはインターネットで調べてみても良く分からず、口が象の鼻のようなところは、平家の赤旗のチョウや揚げ羽の蝶の御紋と似ています。当時は蝶の口はこのようなイメージだったのかもしれません、それにしても、平家の赤旗の蝶の触覚は後ろになびいていて、およそ現実とかけ離れているのが面白く感じられました。おそらく、観察などせずに、当時の「蝶のイメージ」で作られているのでしょう。

  • 4月28日
  • 地下駐車場の天井にオオミズアオが止まっていました。今年初めてです。新鮮な感じで少し小型でした。

  • 早春の蛾の初見日

    【4月の観察種】

    鱗翅目(蛾)(87種)
    ヒゲナガガ科  ホソオビヒゲナガ      ウスキヒゲナガ 
    ヒロズコガ科  ナガバヒロズコガ 
    ハマキガ科   ニセマメサヤヒメハマキ   スネブトヒメハマキ
    メイガ科    マエアカスカシノメイガ   ナノメイガ
    マドガ科    アカジママドガ
    カギバガ科   ヤマトカギバ        アシベニカギバ
    トガリバガ科  ホシボシトガリバ      サカハチトガリバ      マユミトガリバ
    トリバガ科   ブドウトリバ
    シャクガ科   モンキキナミシャク     ナカオビカバナミシャク   ヒメカバナミシャク
            ソトカバナミシャク     シタコバネナミシャク    トビモンオオエダシャク
            ハスオビエダシャク     ウスベニスジナミシャク   ホソバトガリエダシャク
            ギフウスキナミシャク    オオマエキトビエダシャク  フタトビスジナミシャク
            モンシロツマキリエダシャク ウスバキエダシャク     モンオビオエダシャク
            トシマカバナミシャク    フタナミトビヒメシャク   オオトビスジエダシャク
            ヒロバトガリエダシャク   ツバメアオシャク      フタモンクロナミシャク
            オオハガタナミシャク    ツマキリウスキエダシャク  フタテンオエダシャク
            ウラベニエダシャク     アシブトチズモンアオシャク フトジマナミシャク
            シタコバネナミシャク    ツツジツマキリエダシャク  クロスジアオナミシャク
            ホソミスジエダシャク    マエキトビエダシャク    エグリヅマエダシャク
            ツマキエダシャク      クロフオオシロエダシャク
    スズメガ科   ホシヒメホウジャク
    ヤママユガ科  オオミズアオ
    イボタガ科   イボタガ
    シャチホコガ科 ノヒラトビモンシャチホコ  シャチホコガ        ユミモンシャチホコ 
            アオシャチホコ       オオエグリシャチホコ    アカネシャチホコ
    ドクガ科    リンゴドクガ        ゴマフリドクガ
    ヒトリガ科   キハラゴマダラヒトリ
    コブガ科    ヘリグロコブガ
    ヤガ科     フサヤガ          ホソバキリガ        カシワキリガ
            アカエグリバ        プライヤキリバ       カシワキボシキリガ
            シロヘリキリガ       クロスジキリガ       クロテンキリガ
            モクメクチバ        カブラヤガ         ナミテンアツバ
            フタテンアツバ       クロミミキリガ       フクラスズメ
            トビモンアツバ       アオアツバ         アカキリバ
            ミヤマオビキリガ      ナカジロアツバ       モンムラサキクチバ
            カギモンヤガ        ハンノキリガ        コモクメヨトウ
            ナシケンモン        アカテンクチバ       アトジロキリガ
    トラガ科    マイコトラガ 

    鱗翅目(チョウ)(8種)
    アゲハチョウ科 アゲハ           クロアゲハ
    シロチョウ科  モンシロチョウ       キチョウ          ツマキチョウ
            モンキチョウ
    タテハチョウ科 キタテハ
    シジミチョウ科 ルリシジミ   

    トビケラ目(4種)
    カワトビケラ科 ヒゲナガカワトビケラ
    ニンギョウトビケラ科 ニンギョウトビケラ
    シマトビケラ科 ウルマーシマトビケラ
    カクツツトビケラ科 トウヨウカクツツトビケラ

    カメムシ目(5種)
    カスミカメムシ科 コブヒゲカスミカメ  
    カメムシ科   クサギカメムシ
    サシガメ科   ヨコヅナサシガメ      アカシマサシガメ
    マルカメムシ科 マルカメムシ  

    カゲロウ目(2種)
    マダラカゲロウ科 クロマダラカゲロウ 
    コカゲロウ科  ヤマトコカゲロウ

    カワゲラ目(1種)
    カワゲラ科   ヤマトフタツメカワゲラ

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    宮城・山形県境にて
    3月30日撮影
    ヒラタカゲロウ幼虫
    3月30日撮影
    宮城・山形県境にて
    3月30日撮影
    フキノトウ
    3月30日撮影
    マイコトラガ
    4月5日撮影




    イボタガ
    4月9日撮影
    ケブカヒゲナガ
    4月20日撮影
    オオミズアオ
    4月28日撮影
    大仏殿の蝶
    4月27日撮影