上層鱗の構造

 次に上層鱗の構造を見てみましょう。上層鱗ではリッジがまばらについています。従って、リッジとリッジの隙間がはっきりと見ることができます。上層鱗の断面を見ると、リッジの下には均一な膜が見られます。つまり、リッジの隙間を通った光はこの基板の膜に当たることになります。この膜は均一で厚さは190-230 nmです。この厚さは、薄膜干渉で青色から緑色の光を反射するのに都合のよい厚さです。一方、リッジは発達がやや悪いですが、やはり棚構造を持っています。しかも、その棚は下層鱗と同様、基板に対して7-10度傾いています。

 さて、このような構造を持つ上層鱗に光が当たるとどんなことが起きるでしょう。下層鱗と同様、リッジに当たった光は規則正しい棚構造により青色の光を反射します。その方向は、棚の傾きの2倍で15-20度位傾いています。一方、基板に当たった光は薄膜干渉により青色の光を反射しますが、その方向は基板に対して垂直です。しかも、リッジが規則的に付いていますので、ちょうどリッジの隙間が回折格子になったように、反射光に対しても回折格子になり、回折スポットが見えます。一方、リッジの方は高さがばらついているので干渉できずに横に広がるだけです。上層鱗の反射パターンが2重になったのはこのような二つの仕組みが働いたからなのです。このように奇妙な構造をもった上層鱗の役割についてはまたあとで触れることにしましょう。
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