鱗粉1個を取り出し、これに白色光を当てて、その透過と反射パターンを調べてみたのが上の写真です。実は、この写真がモルフォチョウの青色の謎のほとんどすべてを物語っています。まず、透過側を見てみましょう。左側の列の上の写真は上層鱗、下は下層鱗です。上層鱗には見事な回折スポットが見えています。中心の0次光の両側にほぼ対称に±1次、±2次のスポットが並んでいます。0次は白色ですが、そのほかは虹色に分かれています。下層鱗については分かりにくいのですが、両側に伸びる黄色から赤い部分が±1次光です。同じ1次でも間隔が広いのはリッジ間隔が狭いからです。下層鱗にはそのほか黄色のハローが見えています。

 このように上層鱗も下層鱗も共に、透過光については回折格子になっていますが、反射光を見ると驚くようなパターンが見られます。まず、下層鱗については、回折スポットが全く見えなくて、青い光が横に細長く伸びているだけです。一方、上層鱗は細長く見える部分と回折スポットらしい点列が見えるものとが2重になって分かれています。実際に目に見えるのは反射側ですので、モルフォチョウ最大の疑問が湧いてきます。あれほど綺麗にリッジが並んでいるのに、なぜ反射光に対しては回折格子にならないのだろうか。言い換えれば、リッジとリッジの隙間は確かに回折格子になっているのに、リッジに当たった光については回折格子にならないようにする何らかの仕組みがあるということになります。つまり、リッジに謎があるのです。
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