互い違いの棚構造

 ここからは最新の研究成果を書いていきましょう。これから用いる蝶はレテノールモルフォという種類です。この蝶は青色がもっとも強いことでよく知られています。これまでのディディウスモルフォと異なるのは、上層鱗が退化してほとんどなくなっていることと、下層鱗のリッジがよく発達して、棚の数が10段もあるという点です。このレテノールモルフォの下層鱗を走査型電子顕微鏡で詳しく調べたものが左の写真です。この写真は鱗粉の根元に向かって鱗粉断面を見たものですが、棚が上に到達している部分の形状が面白いですね。断面が丸い端から両側に張り出した棚になっていくとき、少し右上がりになっていることに気が付きますか。つまり、棚は中心の柱に対して対称に出ていないのです。このことは、右の図の透過電子顕微鏡写真をみるともっとよくわかります。この写真はリッジの主要な構造をモデル化するために作ったものですが、右と左の棚が互い違いに付いてくることに気が付きます。実は、このことがモルフォチョウにとって重要だったのです。
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